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2012年12月15日
山崎 道子さん/フリーアナウンサー
2012年11月4日、下関海峡マラソン。
約1万1000人がエントリー、そのうちフルマラソンには約9000人のランナーが挑みました。
4時間25分18秒で、私にとってはじめての42.195キロの旅が無事に終わりました。
走り終えて、スタッフの女性から
「おめでとうございます」
と、完走メダルを首にかけていただいた瞬間、これまで味わったことのない感情と共に、涙があふれました。今でもそのときのことを思い出すと、同じような感情がこみ上げてきます。
マラソンをはじめるまでの私は、運動とは無縁の世界に生きていました。
学生時代から運動は苦手、学校のマラソン大会でさえ、走るのがいやでズル休みをしていたほど。
部活の経験もなく、35歳で発覚した子宮筋腫の影響で手術するまでは貧血に悩まされ。まさかそんな自分がこんなことを始めるなど、まさに「予想外」の出来事です。
仕事の忙しさから6年放置していた子宮筋腫、気がつけば大きなもので新生児の頭の大きさくらいになっていて、貧血やからだのむくみ、だるさなど様々なところに影響が及んでしまい、医師から手術を勧められ、41歳で子宮全摘手術を受けました。
長年苦しめられていた様々な症状から解放されたのはよかったのですが、体重が一気に5キロも落ちてしまいました。運動もしていなかったので、筋肉もありません。鏡で見た自分の体は、それはもう、見られたものではありませんでした。健康になったのはいいけれど、やはり見た目も大事。このままではいけないと思い、はじめたのがジャザサイズというダンスフィットネスです。アメリカ発祥で、ジャスダンスやヨガ、ピラティス、ボクササイズなど、様々なフィットネスの要素(動き)を取り入れ、音楽にのせて体を動かしていきます。ストレッチや筋トレのメニューもあり、楽しみながら体をつくっていくことが出来ました。
「今だったら、あなたも走れるかもしれないよ」
ジャザサイズをはじめて1年経った頃、友人がジョギングに誘ってくれたのがマラソンとの出会いです。シューズと、ちょっとかわいらしいランニングウエアを買って、まずはゆっくりとジョギングから。歩くよりもほんの少し早いくらい、おしゃべりしながら走れる程度で、まずは2キロ。そこからだんだんと距離を伸ばし、走る時間も15分程度から徐々に長くしていき、1ヶ月経った頃には5キロくらい走れるようになっていました。
「目標があったほうが、練習も楽しいよ」
次に誘われたのは10キロのロードレース。56分で完走。目標の1時間を切ることが出来ました。
ジャザサイズで体幹トレーニングを重点的におこなってきたので、それが走る上でもよかったようです。
ひとつ結果が出ると、楽しくなって次の目標が見えてきます。これまでは、何でもやらないうちから「それはムリ」と自分で決め付けていたクセがありましたが、「とりあえずやってみよう」と前向きな気持ちが自然と持てるようになりました。練習も楽しくなり、一緒に走る仲間たちにも恵まれてその年の暮れにはハーフマラソンに挑戦、2時間2分でフィニッシュ。翌年2月には1時間56分で自己ベストを更新することが出来ました。そして、走り始めて1年半で迎えたフルマラソン。先輩ランナーから「はじめてにしては上出来」というお褒めの言葉もいただく結果を出すことができました。
よく聞かれるのが、「走ると痩せますか?」「どうして続けられるのですか?」ということ。
これはまず、女性ならではだと思いますが、かわいいウエアやシューズを買うことです。ここでしっかりお金をかけて準備をすると、やらざるを得ない状況が出来上がります。最近の女性用ランニングウエアはかわいいデザインが多く、選ぶのもまた楽しみのひとつです。そして、大きな大会に出るときには、ネイルケアをしたり、ピアスやネックレスなどアクセサリーも身につけて楽しみます。
残念ながら、走り始めると体重は増えることがよくあります。ただし、それは筋肉がついたためで、脂肪が増えるわけではありません。私の場合ですが、走り始めて体重は2キロ増えましたが、体脂肪は18パーセントくらいを維持できています。走る前は20パーセント以上ありました。筋肉がつくと、体のラインも締まってくるので見た目は太ったようには見えないと思います。
筋肉がつくと、代謝もあがるので食べてもそれほど太らなくなりましたし、汗もしっかりかけるようになりました。人間の体の細胞は半年でだいたい全てがリニューアルされる、と聞いたことがあります。走ることで全身に血液がまわり代謝も上がるので、半年後の体をつくる細胞はおそらく、若く元気あるものに変身しているのではないか、と思いますが。いかがでしょうか?
走ることは、体だけでなく心にもよい影響を与えてくれました。
前向きな気持ちにもなれ、走ることで車を運転しているときには見えないものも見えてきて、走った後の飲み物や食事も美味しく感じ、食べるものに関しても注意深くなりました。何をどう食べたら体に良く、走るための栄養が得られるのか。食べ物だけでなく、サプリメントも上手く取り入れると、走った後の疲労感も違ってきます。若くないからこそ気をつけなくてはいけないことはありますが、気をつけていれば、年齢関係なく走ることは出来る。これもまた、気づいたことのひとつでした。
走ることで友達も増えて、一緒に練習をしたりレースに出たり、パソコンなどで情報交換をしたり。
もちろん、走ること以外の場面でも仲良くさせていただいています。自分の世界も広がったような気がします。
先日の海峡マラソンでは、70歳を越えた方が100回目のフルマラソン完走を達成されていました。
残念ながら、去年の記録を更新することは出来なかったそうですが、いつまでも目標を持ってそれに向かって努力することの素晴らしさを教えていただきました。
そんなことを考えると、全ては「子宮筋腫」という病気との出会いやそこからの経験がはじまり。
病気は、出来ればしたくないことですが、そうなってしまった以上は、くよくよせずに
「どうしたらより快適な生活が送れるのか」「治療方法にはどんなものがあるのか」「効果やリスクはどんなものなのか」など、お医者さんと一緒になって考えることが大事だと思います。
お医者さん任せにするのではなく、自分の身体なので自分で考える。自分にしかきこえない、身体の言葉に耳を傾ける。
幸い、私は元気になりましたが、これからもあの頃の気持ちを忘れずに、まずは70歳まで走り続けることを目標にしていきたいと思います。