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2011年02月15日
林 ことみさん/手芸ジャーナリスト
前回の山岡テイさんからリレーエッセイのバトンを頂き、参加させていただきました。 ここの主催者である、とさか先生から 「健康は体と心のバランスが大事」というお話を伺いましたが、私もその通りだと感じています。特に心のバランスが崩れるとそれは体にも影響があるようです。このバランスの取り方は人それぞれでしょうが私の場合は趣味でもありそしていつの間にかそれが仕事になってしまった手仕事、特に編み物が心の平安に多いに貢献しているように感じています。
私の編み物は小学校1年生頃に始まり、3〜4年生で人形の帽子、中学生のときに初めてのセーター、大学時代は編み込みセーターやアランセーター、子育て中は息子のセーター、とあくまで趣味で途切れる事無く続けていました。子供服を雑誌に発表しているときにも時々は仕事として子供用のニットは作っていましたが仕事のほとんどがニット本になったのはこの10年余りのこと。それには本当に偶然の出会いがあったからです。
50歳を迎えた年、当時は手作り子供服雑誌を編集していたのですが、所属していた編集部で色々と問題が発生したこともあり、人生設計図変更の必要に迫られました。このまま手作り子供服雑誌の仕事が続けられるのだろうか、残りの人生をどう過ごしたらいいのだろうか、等々と悩んでいたときに思い出したのが、1995年に仕事で訪れたデンマークのスカルス手芸学校のサマースクールでした。息子も独り立ちしていましたので人生のリセットのためにとりあえず編集部を辞め、サマースクールに参加することにしましたが、それが幸いにも第一回北欧ニットシンポジウムでした。 海外旅行の経験はあったものの1日中英語を話して暮らす経験などなかった私はそのシンポジウムが何なのかもわからないまま、でも楽しい1週間を過ごしました。なぜなら言葉に問題があっても「ニット」という共通言語を北欧の仲間達が認めてくれたからでした。そしてそこで初めての編み物に出会ったのです。
2009年に日本で開催した「北欧ニットシンポジウム」では
総勢100余名が参加。その際に撮ったほぼ全員の集合写真。
総勢100余名が参加。その際に撮ったほぼ全員の集合写真。
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帰国後その編み物「ドミノ編み」の講師にコンタクトを取って日本での出版を依頼し、「ヴィヴィアンの楽しいドミノ編み」という本ができました。 この本を編集した事でニットの本作りだけではなく、ニットの新たな面白さを再認識するとととなり、シンポジウムに毎年参加していたところ、思いがけず2009年日本での開催を依頼されました。3年間色々と情報を集めたり、友人に相談しながら案を練って、骨子を作ったところでドミノ編みの作家ヴィヴィアンに紹介されたアメリカに住むニット好きの友人に協力を仰ぎ、無事終える事ができました。この経験はそれまで個人で楽しんで来たニットを皆で共有する、という大変貴重なものとなりました。
この10年間にはエストニアに友人もでき、想像もできなかった充実した50歳代をおくることができました。ニットという言葉に「つなぐ」という意味もあるということですが「まさにニットが私と北欧の人々とを結んでくれたのでした。
このシンポジウムで日本にはまだ紹介されていない(編み物の先生は知っているテクニックでも一般的に知られていないという意味で)編み方が沢山ある事を知り、そのテクニックの楽しさと編み物の楽しみを伝えてきた10年間でもありました。
60歳代に入り、これからの残りの人生においても編み物は常に私の生活には欠かせないものであり続けるでしょうが、今後は今までのように海外のテクニックを日本に紹介するだけではなく、日本の素晴らしい手仕事を海外に紹介できたらどんなにいいだろう、と思っていたところアメリカ人のシンポジウム仲間が協力してくれてアメリカのPIECEWORKという手芸雑誌に日本の「刺し子」を紹介する事ができました。 これからも体と心のバランスを上手に取りながら健康を維持しつつこの仕事を続けて行きたいと思っています。
投稿者 green_heart : 2011年02月15日 09:34